埼玉県坂戸市(東武東上線 北坂戸駅 徒歩10分)にある、もりや歯科 院長 森谷良行(もりやよしゆき)です。
平成19年(2007年)12月の肌寒い日に70代女性の方が入れ歯の悩みで来院されました。
「入れ歯がガタガタする、噛みづらい、話しづらい、安定剤を使用するのが苦痛」とのことでした。
詳しくお伺いすると、10年ほど前に作成した入れ歯を使い続けておられましたが、その歯医者さんに相談したところ「調子が悪いときは入れ歯安定剤を使って自分でどうにかしなさい」と言われていたようです。
「その言葉を信じて約10年間使い続けていたが、調子が悪くなって、もりや歯科に来院することになった」と教えて頂きました。
入れ歯安定剤の長期間の利用はメーカーも推奨していない
入れ歯安定剤をご利用中の方で、メーカーの説明書を読んだことがある方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか?
私も2020年10月18日現在、発売されている商品をインターネット上で検索をして使用説明書を読んでみましたが、全ての商品で長期間の使用は控えるように促しています。また歯科医院への受診を促すような内容もあります。
(参考)新ポリグリップの例 (公式サイトはこちら)
歯科医師にもいろいろな方がいるのが現実ですが、「入れ歯安定剤を使ってどうにかするように」は無知であるが故の無責任な言葉だと私は考えています。
靴擦れへの対応に似ている
例えばですが、出先で靴擦れを起こしてしまったらどうしますか?
・ひとまずその時間だけどうにか過ごす(我慢)
・ガーゼやティッシュなどを使って保護する(応急処置)
・新しい靴を買う(買い替え)
などの対処を考えますよね。でもずっとガーゼやティッシュを詰めて履き続ける人は少ないと思います。
入れ歯安定剤も同じで、あくまでも応急処置として入れ歯や歯ぐきを保護している状態にするのが主な目的です。
入れ歯安定剤を長期間使うと、どんどん調子が悪くなることが多い
長期間にわたって入れ歯安定剤を使用していてもいっこうに良くなりません。
むしろどちらかと言えば、入れ歯安定剤の使用量がどんどん増えてきて、入れ歯の調子もどんどん悪くなっていくのを実感していくのではないでしょうか。
写真は、入れ歯安定剤を長期間使用することによって、入れ歯に積み重なってしまった安定剤の様子です。
下の入れ歯は特に安定剤が積み重なっているのがお分かりになるでしょうか。
入れ歯安定剤の利用によって、入れ歯の土手(歯茎の部分)の形が変化する
そもそもとして、入れ歯は入れ歯の土手と呼ばれる歯茎の部分と密着させることで安定させます。
もしそこがぐらついたときに応急処置として、そのぐらつきを安定させるために入れ歯安定剤を使うのは仕方ありませんが、継続して利用すると、入れ歯安定剤の安定の厚みの分だけ、もともとあった自分のお口の中の土手の形も変形しています。
こうなると、どんどん入れ歯が合わなくなってしまいます。
入れ歯づくりに熟達した歯科医師でさえ、お口の中でぐらつきを修正することは非常に難しい中で、少し言い方が厳しいとは思いますが、専門的な知識もなく不都合を軽減するためだけに安定剤を使い続けることは自分で自分の身体を壊しているだけです。
もりや歯科では、24時間使える入れ歯づくりを目指しています。
このブログに行き着いたのは、安定剤の使用に不安を感じていたり、どうにかしたいと思っているからなのではないですか。
それでも入れ歯安定剤を使用し続けることを選択しても良いのですが・・・
私自身は長期間の入れ歯安定剤の使用は否定しています。もちろん出先で歯科医院への受診ができない場合のような緊急時に使用するのは良いのですが、毎日使用することは断固反対です。
さらに言えば、そのような状態の入れ歯治療しかできないことは、歯科界にとって不名誉なことです。もりや歯科では、治療に携わる歯科医師として、根本から見直して24時間入れていても問題のない入れ歯づくりを目指しています。
*余談ですが、こちらの記事には驚きました。入れ歯安定剤が原因でアルコールの呼気検査で基準値を超えた、という内容です。
酒気帯びの真犯人は「入れ歯安定剤」、逆転無罪判決に見た冤罪リスク(ダイヤモンド・オンライン)